地味めな着物なので、帯は、叔母からいただいたビビットなオレンジの麻の帯。
帯あげと帯締めも完全に夏仕様!
下着はもちろん、筒袖の肌襦袢に半襟をつけただけだから、とっても涼しい(*^-^)b
宋・元時代から清朝までの中国絵画の名品(国宝や重文)などが勢ぞろいしていて、とても見ごたえがあった。
奇想派と呼ばれる王建章の《川至日升図》や張瑞図の《秋景山水図》(いずれも重文)の、デフォルメされた岩山や樹木の表現、不気味に歪んだ岩山の輪郭などは、曾我蕭白のインスピレーションの源となったことだろう。
実際に若冲は、張思恭の作とされる《文殊・普賢菩薩像》を、「巧妙無比」であると称え、この画を参照しながら《釈迦三尊像》を描いたとされている。
静嘉堂文庫のいいところは、日曜日にもかかわらずそれほど来館者がいないので、これだけの名品をほとんど「かぶりつき」で、じっくりと鑑賞できることだ。
(美術鑑賞は、こうありたいものである。)
それに、受付では8ページにも及ぶ詳細なリーフレットが無償で配布されるのも嬉しい。
主な作品の写真も掲載されているので、後で思い出すのに役に立つ。
午後からは、静嘉堂文庫の近くにある世田谷美術館へ。
世田谷美術館は砧公園のなかにあるので、緑豊かで閑静な美術館だ。
企画展では銅版画家の《駒井哲郎》展が開催されていた。
入口付近に駒井哲郎の写真が展示されていて、鼻筋の通った痩身の美男子だった。
(「イケメン」というよりも、「美男子」という言葉がぴったり。)
駒井哲郎の作風は、その時々で大きく変化する。
ジョアン・ミロ風の太い墨線で描いたような作品が登場するかと思えば、パウル・クレーのような可愛いくて繊細な作品もあり、ルドンを彷彿させるモノクロの少し不気味な作品もある。
特に印象に残ったのは、詩人の安東次男とコラボレートした詩画集『からんどりえ』と『人それを呼んで反歌という』の作品群だ。
安東次男という詩人の存在をこのとき初めて知ったのだが、その詩がとてもカッコイイ!
たとえば;
霙(みぞれ)
地上に届くまえに
予感の折返点があって
そこから
腐爛した死んだ時間たちが
はじまる
風がそこに甘皮を張ると
太陽はこの擬卵を温める
空の中へ逃げてゆく水と
その水から
零れ落ちる魚たち
はぼくの神経痛だ
通行止めの柵を破った
魚たちは
収拾のつかない白骨となって
世界に散らばる
そのときひとは
漁
泊
滑
泪にちかい字を無数に思い出すが
けっして泪にはならない
この安東の詩に合わせて、駒井は骨ばった細長い魚の版画を描いている。
東洋絵画、駒井哲郎の版画、安東次男の詩。
素晴らしい出会いのあった日曜日に乾杯!
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