假屋崎省吾の世界展に行った時のコーディネート。
まだ袖を通していない薄物が何枚かあるので着物にしたかったけれど、
この日の最高気温は36度!!
家族にも「この酷暑に着物は無謀だ!」と言われ、泣く泣く、浴衣で三越へ。
それでも、老舗デパートに夏祭りファッションで行くのも気が引けるので、紗献上なごや帯に白足袋を履いて出かけました。
でもこのコーディネート、けっこう好評で、知らない人からたくさん声をかけていただきました。
全体像はこんな感じ。
全体の色数を少なくして、いつものようにスカイブルーの帯揚げがアクセント。
三越に行くと、この暑さでも着物の方が結構いらしたこと。
す、凄すぎる……。
年配のご婦人ともなると、塵よけのコートまで着ていらしたり。
夏着物の上に、さらに薄物とはいえコートを着るなんて、想像を絶します……。
熱中症にはくれぐれも気をつけましょう。
To see a world in a grain of sand, and a heaven in a wild flower.... by William Blake
2013年8月14日水曜日
2013年8月12日月曜日
假屋崎省吾の世界展
8月の第2日曜日は、日本橋三越で開かれている『假屋崎省吾の世界展』へ。
展覧会を拝見する前に、本館1階の天女(まごころ)像の前で行なわれたデモンストレーション&トークショーに参加しました。
黒のボトムスにモーヴカラーのジャケットをすっきりと着こなした假屋崎さんは、小柄で華奢な方でした。
きっと身体に贅肉をつけるなんて、彼の美意識が許さないのでしょう。
小気味良いエネルギッシュなトークで観客を引き込みながら、テンポよくアレンジしていく假屋崎さん。
トークショー中は撮影禁止なので、上の写真はトーク終了後の作品の様子です。
花瓶の多くも假屋崎さんがデザインしたもの。
オブジェとしても素敵なうえに、初心者でも簡単に花が生けられるように、さまざまな工夫が凝らされていました。
假屋崎さんにちなんで「ショウゴ・エレガン」と命名されたラベンダーピンクのバラ。
花弁の数が通常の2倍もあるゴージャスで優美なバラです。
写真はスプレーローズを裾にあしらったアレンジメント。
こちらはカラフルで涼しげ。
寒色系で、涼感を誘う色合い。
縦長ラインを強調しつつボトムにポイントを置いたデザイン。
すっきり、シャープな印象。
こちらは假屋崎さんの作品ではなく、三越にディスプレイされていたアクアリウム。
金魚の水槽は、涼しげで心惹かれます。
新館7階の展覧会では、絢爛豪華な假屋崎ワールドが展開されていました。
お花も見事だったけれど、興味深かったのは彼がデザインした着物。
振り袖や打ち掛けもあったのですが、こちらは派手すぎて、ショー向きかな。
でも訪問着は、とても上品な色合いとデザインで思わずじっと見入ってしまった。
胡蝶蘭やダリヤなど、着物の柄にはあまり使われない意匠があってとてもユニーク。
個人的にいちばん気に入ったのは、百合とオンシジウムをデザインした着物。
青磁色の地色に、裾と袖部分だけモーヴカラーを配した気品のある一枚でした。
假屋崎デザインの着物以外にも、20世紀初頭~前半に活躍した六世尾上菊五郎の《黒繻子地正月飾模様縫打掛》や、十世市川段十郎が所有した《白斜子地鯉の瀧登模様染縫着付》など、目も眩むほど豪華な刺繍が施された歌舞伎衣装も展示されていて、こちらも素晴らしかったです。
また、会場には、私の好きなショパンのワルツ第9番変イ長調が流れていて、うっとりと聴き入っていたのですが、これは假屋崎さんが演奏されたCDなのだそうです。
ほんとうに多才な方ですね。
ワルツ第9番変イ長調は、どこかアンニュイで、ミステリアスかつ物悲しい調子の演奏が個人的には好みですが、假屋崎のピアノはどこまでも優雅。
展覧会の雰囲気と花々の香りにとても似合っていて、夏のけだるい午後の甘美なひとときを満喫しました。
展覧会を拝見する前に、本館1階の天女(まごころ)像の前で行なわれたデモンストレーション&トークショーに参加しました。
黒のボトムスにモーヴカラーのジャケットをすっきりと着こなした假屋崎さんは、小柄で華奢な方でした。
きっと身体に贅肉をつけるなんて、彼の美意識が許さないのでしょう。
小気味良いエネルギッシュなトークで観客を引き込みながら、テンポよくアレンジしていく假屋崎さん。
トークショー中は撮影禁止なので、上の写真はトーク終了後の作品の様子です。
花瓶の多くも假屋崎さんがデザインしたもの。
オブジェとしても素敵なうえに、初心者でも簡単に花が生けられるように、さまざまな工夫が凝らされていました。
假屋崎さんにちなんで「ショウゴ・エレガン」と命名されたラベンダーピンクのバラ。
花弁の数が通常の2倍もあるゴージャスで優美なバラです。
写真はスプレーローズを裾にあしらったアレンジメント。
こちらはカラフルで涼しげ。
寒色系で、涼感を誘う色合い。
縦長ラインを強調しつつボトムにポイントを置いたデザイン。
すっきり、シャープな印象。
こちらは假屋崎さんの作品ではなく、三越にディスプレイされていたアクアリウム。
金魚の水槽は、涼しげで心惹かれます。
新館7階の展覧会では、絢爛豪華な假屋崎ワールドが展開されていました。
お花も見事だったけれど、興味深かったのは彼がデザインした着物。
振り袖や打ち掛けもあったのですが、こちらは派手すぎて、ショー向きかな。
でも訪問着は、とても上品な色合いとデザインで思わずじっと見入ってしまった。
胡蝶蘭やダリヤなど、着物の柄にはあまり使われない意匠があってとてもユニーク。
個人的にいちばん気に入ったのは、百合とオンシジウムをデザインした着物。
青磁色の地色に、裾と袖部分だけモーヴカラーを配した気品のある一枚でした。
假屋崎デザインの着物以外にも、20世紀初頭~前半に活躍した六世尾上菊五郎の《黒繻子地正月飾模様縫打掛》や、十世市川段十郎が所有した《白斜子地鯉の瀧登模様染縫着付》など、目も眩むほど豪華な刺繍が施された歌舞伎衣装も展示されていて、こちらも素晴らしかったです。
また、会場には、私の好きなショパンのワルツ第9番変イ長調が流れていて、うっとりと聴き入っていたのですが、これは假屋崎さんが演奏されたCDなのだそうです。
ほんとうに多才な方ですね。
ワルツ第9番変イ長調は、どこかアンニュイで、ミステリアスかつ物悲しい調子の演奏が個人的には好みですが、假屋崎のピアノはどこまでも優雅。
展覧会の雰囲気と花々の香りにとても似合っていて、夏のけだるい午後の甘美なひとときを満喫しました。
2013年8月8日木曜日
八王子祭り~熱気が違う!
すごい熱気に包まれた八王子祭りへ。
山車も凝っているし、パフォーマンスのクオリティも高い!
とくに、南新町のキツネの踊りが、真に迫っていて、見ごたえがあります!
この暑さの中、ずっとハイレベルな演技を見せ続けるなんて、体力・精神力ともに凄すぎる。
山車どうしがすれ違う「ぶっつけ」が、見どころのひとつ。
3つの山車が1箇所に集まって、一気に盛り上がる。
山車の上に載っている人のバランス感覚も一見の価値あり。
ビルの2~3階くらいの高さはあるので、慣れないとかなり怖いのではないだろうか。
まさにキツネ憑き! 憑依状態のキツネさん。
山車も凝っているし、パフォーマンスのクオリティも高い!
とくに、南新町のキツネの踊りが、真に迫っていて、見ごたえがあります!
この暑さの中、ずっとハイレベルな演技を見せ続けるなんて、体力・精神力ともに凄すぎる。
山車どうしがすれ違う「ぶっつけ」が、見どころのひとつ。
3つの山車が1箇所に集まって、一気に盛り上がる。
山車の上に載っている人のバランス感覚も一見の価値あり。
ビルの2~3階くらいの高さはあるので、慣れないとかなり怖いのではないだろうか。
まさにキツネ憑き! 憑依状態のキツネさん。
八王子祭り~黒塀通り
先週の日曜日は八王子祭りへ。
お祭りの開催場所の近くに、今も残る花街として有名な黒壁通りがあったので行ってみました。
その名のとおり、黒塀が続く花街。
柳があるのも花柳界ならではですね。 芸者さんの写真が黒壁を彩っていました。
八王子には現在も町衆文化が残っているのでしょうか……。
都心でも花街の生き残りは難しいご時世。
八王子ではなかなか需要が……大変だろうなあ。
浴衣で記念撮影。
この日は会えませんでしたが、芸者さん達も八王子祭りに参加されていて、
「女であること」のプロたる彼女たちは、間近で見るとさらに色っぽいのです。
まさに、「匂い立つような」という形容詞がぴったり。
少しでもあやかろうと(無駄な努力ですが)、芸者さんたちの写真と一緒に写してもらいました。
江戸時代から、織物産業で潤った八王子。
かつては「桑の都」と呼ばれたそうです。
その繁栄とともに、花街も栄え、往時の面影が、ここ黒塀通りに残っています。
八王子には今も、趣のあるお店が軒を連ねています。
写真は、芸者さん御用達の呉服屋さん。
上の写真は、安政元年創業の「あらもの屋」さん。
ビルの谷間に残るお茶屋さん。
ずっと残っていてほしいです。
お祭りの開催場所の近くに、今も残る花街として有名な黒壁通りがあったので行ってみました。
その名のとおり、黒塀が続く花街。
柳があるのも花柳界ならではですね。 芸者さんの写真が黒壁を彩っていました。
| 風情ある置屋さん |
都心でも花街の生き残りは難しいご時世。
八王子ではなかなか需要が……大変だろうなあ。
浴衣で記念撮影。
この日は会えませんでしたが、芸者さん達も八王子祭りに参加されていて、
「女であること」のプロたる彼女たちは、間近で見るとさらに色っぽいのです。
まさに、「匂い立つような」という形容詞がぴったり。
少しでもあやかろうと(無駄な努力ですが)、芸者さんたちの写真と一緒に写してもらいました。
江戸時代から、織物産業で潤った八王子。
かつては「桑の都」と呼ばれたそうです。
その繁栄とともに、花街も栄え、往時の面影が、ここ黒塀通りに残っています。
八王子には今も、趣のあるお店が軒を連ねています。
写真は、芸者さん御用達の呉服屋さん。
上の写真は、安政元年創業の「あらもの屋」さん。
ビルの谷間に残るお茶屋さん。
ずっと残っていてほしいです。
2013年8月6日火曜日
荒磯能事前講座のコーディネート
だいぶ前になるけれど、荒磯能事前講座の時のコーディネート。
麻混の縮みの着物に、露芝草柄の紗のなごや帯。
事前講座では、さすがにこの暑さでは着物率が低く、おそらく和服姿は私だけだったような……。
汗をかかないようにするには、Bunkamuraで涼んでから(ギャラリーの展示をひと通り見てまわってから)能楽堂に移動するのがコツ。
2013年8月3日土曜日
8月最初の土曜日のお出かけ
あっという間に8月! 夏は瞬く間に過ぎていきます。
ぼやぼやしていると夏きものをきそびれてしまうので、急いで急いで。
そんな8月最初の土曜日のコーディネート。
プレタの紗の着物に、露芝草柄の紗のなごや帯。
(この色の組み合わせ多いかも。)
この紗の着物はポリエステルだけれど、ポリ特有の熱のこもった感じがほとんどなくて、びっくりするぐらい軽くて涼しい。
風を通してくれるので着ていて快適です。
襦袢が本麻なのも涼しさの一因なのでしょう。
今年は本麻長襦袢を購入して正解でした。
とはいえ、紗の着物は恐ろしいほどスケスケなので、ちょこっと工夫をしています。
工夫その1)アウターに響かない下着を着用。
工夫その2)本麻襦袢の下に、爽竹の裾よけを前後逆にして着用。
裾よけの後ろを二重にすることで、下着の透けを防止。
工夫その3)本麻襦袢が少し短めなので、爽竹の裾よけの裾を可能な限り長くして着用。
こうすることで、襦袢からふくらはぎが透けて見えるのを防止。
等々です。
以上の工夫をしているため下半身は、
ペチコート+裾よけ+長襦袢+紗の着物
と、けっこう着ていて、「暑いかな?」と思ったのですが、これが意外にも涼しい。
足に裾よけや襦袢がまとわりつくことなく、足と布との間にかなり隙間ができているので、その間に風が吹き抜けて、かなり涼しいのです。
そんなわけで、今日の東京の最高気温は30度でしたが、それほど暑い思いをせずに、心地良く夏着物を楽しめました。
ホテルの化粧室で撮った全体像はこんな感じ。
下半身は裾すぼまりにせずに、ふわっと着つけて、空気を通すようにしています。
以前は裾すぼまりを意識して着つけていたのですが、歩きながらふと、ショーウィンドーに映った自分の姿を見ると、お尻のラインがくっきり出過ぎてしまって恥ずかしい思いをしました。
それに裾すぼまりにぴったり着つけると、歩いているときに、裾がめくれやすくなってしまうのです(あくまで私の場合)。
お尻のラインがくっきり出たり、裾がめくれたりするのは、みっともないので、今は下半身もふわっと着つけるようにしています。
ぼやぼやしていると夏きものをきそびれてしまうので、急いで急いで。
そんな8月最初の土曜日のコーディネート。
プレタの紗の着物に、露芝草柄の紗のなごや帯。
(この色の組み合わせ多いかも。)
この紗の着物はポリエステルだけれど、ポリ特有の熱のこもった感じがほとんどなくて、びっくりするぐらい軽くて涼しい。
風を通してくれるので着ていて快適です。
襦袢が本麻なのも涼しさの一因なのでしょう。
今年は本麻長襦袢を購入して正解でした。
とはいえ、紗の着物は恐ろしいほどスケスケなので、ちょこっと工夫をしています。
工夫その1)アウターに響かない下着を着用。
工夫その2)本麻襦袢の下に、爽竹の裾よけを前後逆にして着用。
裾よけの後ろを二重にすることで、下着の透けを防止。
工夫その3)本麻襦袢が少し短めなので、爽竹の裾よけの裾を可能な限り長くして着用。
こうすることで、襦袢からふくらはぎが透けて見えるのを防止。
等々です。
以上の工夫をしているため下半身は、
ペチコート+裾よけ+長襦袢+紗の着物
と、けっこう着ていて、「暑いかな?」と思ったのですが、これが意外にも涼しい。
足に裾よけや襦袢がまとわりつくことなく、足と布との間にかなり隙間ができているので、その間に風が吹き抜けて、かなり涼しいのです。
そんなわけで、今日の東京の最高気温は30度でしたが、それほど暑い思いをせずに、心地良く夏着物を楽しめました。
ホテルの化粧室で撮った全体像はこんな感じ。
下半身は裾すぼまりにせずに、ふわっと着つけて、空気を通すようにしています。
以前は裾すぼまりを意識して着つけていたのですが、歩きながらふと、ショーウィンドーに映った自分の姿を見ると、お尻のラインがくっきり出過ぎてしまって恥ずかしい思いをしました。
それに裾すぼまりにぴったり着つけると、歩いているときに、裾がめくれやすくなってしまうのです(あくまで私の場合)。
お尻のラインがくっきり出たり、裾がめくれたりするのは、みっともないので、今は下半身もふわっと着つけるようにしています。
2013年8月2日金曜日
荒磯能事前講座
もう2週間以上前になるけれど、観世会荒磯能の事前講座に行ってきた。
事前講座というものに参加したのは初めて。
金沢文庫の研究者の方と、シテの方々(坂口貴信師と武田友志師)による質疑応答形式の解説&ワークショップ(実演)で構成され、私のような能楽初心者にはとっても勉強になる講座だった。
(MCは観世芳伸師で、まるで噺家さんのようにお話がうまく、講座は和気あいあいとしたムードで進行。)
第Ⅰ部は、坂口さんがシテを演じる《放下僧(ほうかぞう)》の解説。
「放下(ほうげ)」とは禅用語で「悟ること」を意味するらしいが、能のタイトルでは「ほうか」と読むとのこと。
放下僧とは、禅僧と芸能者を足して二で割ったような存在で、寺院の建立・修繕および橋梁の建設などに必要な寄付を募るために、芸を披露する役割を担ったといわれている。
異形のいでたちで、団扇が大きな役割を果たし、芸能者の象徴として笹を背中に差している。
通常、能ではシテ方は面を掛けるのだが、この《放下僧》では直面(ひためん)で演じるという。
ただし、ワキ方の直面とは違い、シテ方が直面で演じる場合は、能面のような表情で演じなければならないそうだ。
以前、坂口貴信師の仕舞を観たときに、一度も瞬きをしない(ように見える)のに驚いて、「直面だけれど、能面のようだ」と思ったことがある。
直面でシテを演じるこの《放下僧》は坂口師にぴったりの曲目ではないだろうか。
解説の後、地謡の方々も入って、見どころの実演。
普通のお能の方とは違う、狂言っぽい軽妙さが醍醐味とのこと。本番が楽しみだ。
第Ⅱ部は、夏にふさわしい《雷電》の解説。
シテ方の武田友志師がぎっくり腰になっていたため、急遽、弟君の武田文志師が代役をつとめられた。
お能の舞いや正座は腰に負担がかかりやすく、腰を痛める能楽師は少なくない。
たしか、坂口貴信師も昨年の能楽研鑽会のころ、ぎっくり腰になられて、治療しながら《賀茂》を演じていらっしゃった。
とくに《雷電》では激しい動きが多く、内裏を表現する一畳台を、床を打ち鳴らすようにジャンプしながら昇ったり降りたりする演目なので、腰への負担は相当なものだと推察する……。
ドライアイが翻訳者の職業病であるように、腰痛は能楽師の職業病なのだろう。
この仕事をつづける以上、付き合っていくしかない。
武田師には一日も早いご快癒を心からお祈り申し上げる。
最後は、実演に参加された地謡の方々も舞台に登場し、全員で高砂を謡って終演となった。
とっても充実した盛りだくさんの事前講座であった。
事前講座というものに参加したのは初めて。
金沢文庫の研究者の方と、シテの方々(坂口貴信師と武田友志師)による質疑応答形式の解説&ワークショップ(実演)で構成され、私のような能楽初心者にはとっても勉強になる講座だった。
(MCは観世芳伸師で、まるで噺家さんのようにお話がうまく、講座は和気あいあいとしたムードで進行。)
第Ⅰ部は、坂口さんがシテを演じる《放下僧(ほうかぞう)》の解説。
「放下(ほうげ)」とは禅用語で「悟ること」を意味するらしいが、能のタイトルでは「ほうか」と読むとのこと。
放下僧とは、禅僧と芸能者を足して二で割ったような存在で、寺院の建立・修繕および橋梁の建設などに必要な寄付を募るために、芸を披露する役割を担ったといわれている。
異形のいでたちで、団扇が大きな役割を果たし、芸能者の象徴として笹を背中に差している。
通常、能ではシテ方は面を掛けるのだが、この《放下僧》では直面(ひためん)で演じるという。
ただし、ワキ方の直面とは違い、シテ方が直面で演じる場合は、能面のような表情で演じなければならないそうだ。
以前、坂口貴信師の仕舞を観たときに、一度も瞬きをしない(ように見える)のに驚いて、「直面だけれど、能面のようだ」と思ったことがある。
直面でシテを演じるこの《放下僧》は坂口師にぴったりの曲目ではないだろうか。
解説の後、地謡の方々も入って、見どころの実演。
普通のお能の方とは違う、狂言っぽい軽妙さが醍醐味とのこと。本番が楽しみだ。
第Ⅱ部は、夏にふさわしい《雷電》の解説。
シテ方の武田友志師がぎっくり腰になっていたため、急遽、弟君の武田文志師が代役をつとめられた。
お能の舞いや正座は腰に負担がかかりやすく、腰を痛める能楽師は少なくない。
たしか、坂口貴信師も昨年の能楽研鑽会のころ、ぎっくり腰になられて、治療しながら《賀茂》を演じていらっしゃった。
とくに《雷電》では激しい動きが多く、内裏を表現する一畳台を、床を打ち鳴らすようにジャンプしながら昇ったり降りたりする演目なので、腰への負担は相当なものだと推察する……。
ドライアイが翻訳者の職業病であるように、腰痛は能楽師の職業病なのだろう。
この仕事をつづける以上、付き合っていくしかない。
武田師には一日も早いご快癒を心からお祈り申し上げる。
最後は、実演に参加された地謡の方々も舞台に登場し、全員で高砂を謡って終演となった。
とっても充実した盛りだくさんの事前講座であった。
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