会場内は大変混雑していて、しかも、近年まれにみる着物率の高さ!
皆さんかなり気合を入れたコーディネートで、来場者を見るているだけでも眼福、眼福。
展示作品は想像以上に素晴らしいものでした。
細かく繊細な日本刺繍。 細い絹糸で施した美しい文様。
柔らかい絹布だけでなく、シフォンのように薄い布にも刺繍が施されていて、まるで貼りつけたように引きつれもムラもない、恐ろしく緻密な手仕事。
もう、「手先が器用」などというレベルの話ではなく、まさに神業のような「刺繍の至芸」でした。
源氏物語シリーズ《夢浮橋》 |
そうした高度な技術もさることながら、草乃しずか先生の素晴らしさは、なんといってもそのたぐいまれなデザイン感覚と色彩感覚、そして刺繍によって紡ぎだす独自の文学的・絵画的世界です。
たとえば、↑ 上の源氏物語五十四帖の《夢浮橋》では、2人の殿方に愛されて苦悩する浮舟の出家前の迷いの世界と、出家後の決然とした世界を黄色と青で染め分けているそうです。
紫式部の象徴である藤の花がデフォルメされた形で、出家前と後の世界を分けていて、琳派的な美の世界を表現しています。
十二ケ月の着物がたり |
作品を単に展示しているだけでなく、季節ごとのさまざまなシーンを想定したコーディネートが紹介されていたのも、着物好きには嬉しい限り。
写真のように、着物や帯・半襟だけでなく、バッグや帯揚げ、丸ぐけの帯締め、草履の鼻緒など、小物にも、四季の移ろいを感じさせる精緻で可愛らしい刺繍が施されていて、素敵でした。
印象的だったのは、2月の豆まきを主題にした帯や、8月の金魚と花火をテーマにした帯など。
刺繍に、ビーズやレース、スワロフスキーなどもあしらわれていて、キラキラ輝く万華鏡のような世界。
乙女心をくすぐります。
篤姫に捧げる浅葱色麻地江戸解き模様刺繍 |
また、草乃先生のご両親やお義母さま、お祖母さまの形見の着物や帯に刺繍を加えて作品にしたシリーズにも心惹かれました。
私も先日、亡き祖母の着物を着てみたけれど、懐かしい人の思い出の着物に手を加えて甦らせるって素敵だな。
先生の最近の作品では、アフリカの動植物やエジプトの壁画(ヒエログリフなど)、ペルシャの獅子狩紋などをモチーフにしたものもあって、いくつになっても瑞々しい感性をお持ちなんですね。
先生は私の母と同世代ですが、とても若々しい。
才能を発揮できる何かを持っていること(+人から注目されること、目的意識を持つこと)が、若さの秘訣なのですね。
ビデオの中で先生は、「刺繍で世界を変える!」とおっしゃっていました。
いくつになっても遠大な夢を持ち続けるという、そのパワーが凄い!
サイン会で先生のお姿を拝見しましたが、江戸紫の地に刺繍を施したお着物に刺繍半襟、刺繍帯(おそらくどれもご自身の作品)をお召になっていて、素敵な方でした。
やはり美的センスが優れている人って、何をどう着こなせば自分が綺麗に見えるかを心得ているんですね。
感性の柔軟さ、繊細さって、いくつになっても大切なんだなと改めて思いました。
刺繍と着物の世界を存分に堪能した展覧会でした。
着物のコーディネートに刺繍半襟などを少しずつ取り入れていけたらいいな。
ちなみに、ミュージアムショップに、先生の作品(?)らしき刺繍入りバッグや帯、半襟も販売されていて、刺繍半襟は3~5万円台。
ちょっと手が出なかったけれど、先生の作品だったらそれくらいは当然かもしれません。
(たとえ購入したとしても、もったいなくて、私には使えないだろうな。)
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