2013年8月17日土曜日

相模原薪能~土蜘蛛の糸

未体験だった真夏の薪能。「相模原薪能」も今回が初めて。
立ち見覚悟だったけれど、意外にも、比較的見えやすい席をとることができました。


相模原は東京よりも少し気温が低いのか、日が暮れると涼風が吹いて快適。

この薪能は毎年、違う流派が行うとのこと。今年は宝生流でした。



火入れ式の後の能舞台は幻想的で、いよいよ夏の夜の夢の世界が始まります。
この日の番組は以下の通り。


仕舞 「杜若」    小倉伸二郎
   「大江山」   野月聡

狂言 「鎌腹」 山本則俊、山本則重、遠藤博義

能 「土蜘蛛」
 シテ:宝生和英、頼光:藪克徳、小蝶:金野泰大、トモ:木谷哲也
 ワキ:舘田善博、ワキツレ:森常太郎、ワキツレ:則久英志、間:山本則秀
 大鼓:佃良太郎、小鼓:住駒充彦、太鼓:梶谷秀樹、笛:小野寺竜一
 地謡:川瀬隆士、辰巳大二郎、東川尚史、高橋憲正、水上優、東川光夫、
    辰巳満次郎、小倉伸二郎


仕舞の小倉・野月両師はともに白っぽい紋付き袴の清々しい出で立ち。端正で爽やかな舞。

狂言の山本則俊師はさすがに間の取り方が絶妙で、女房に責められ死のうとするけれども、意気地がなくて死に切れないショボくれたダメ亭主を、共感を誘う愛すべき人間として巧みに演じていらっしゃいました。 


最後は、宝生宗家演じる「土蜘蛛」。

辰巳満次郎師率いる安定した地謡部隊が全体をしっかりサポート。

マイクのボリューム不足のせいか、囃子方の鼓と掛け声が少し物足りない気がしたけれど、
「我昔、葛城山に年を経し、土蜘蛛の精魂なり」と塚の中から登場する後シテの土蜘蛛と、独武者との立ち回りは見ごたえがあり、娯楽要素満点でした。

身軽な若き宗家のスペクタクル系演能は、キレがあって、華やか。
真夏の市民薪能にはぴったりだったんじゃないかな。



上の写真は、薪能のパンフレットと、いただいてきた土蜘蛛の糸。

土蜘蛛の糸は厄除けになるそうです。


舞台上で土蜘蛛が投げつける「蜘蛛の巣」は、雁皮紙(薄い和紙)を巻いて1つ1つ手づくりするとのこと。

仕組みは、重石となる鉛玉に、上の写真のような細長い紙テープを巻きつけて投げつける、というローテクなものですが、放物線を描くようにうまく投げるのは難しく、かなりのテクニックを要するそうです。

とはいえ、蜘蛛の巣(なまり玉)は貴重なため、練習はほとんどできず、ぶっつけ本番でやることが多いとか。 

今回の《土蜘蛛》でも、宗家の手から花火のように美しく放射された「千筋の糸」を堪能しました。
持ち帰った糸は、わが家の厄除けのお守りにします。

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