2013年8月25日日曜日

はじめての国立能楽堂図書閲覧室

『作りもの入門』展を観た後は、国立能楽堂・図書閲覧室で過去の演能のDVD鑑賞。

せっかくだから、先ほど観た作り物が登場する曲の講演記録を観ることにした。

1本目は1998年に上演された『道成寺』。


前シテ 白拍子 [56] 梅若 六郎  後シテ 蛇体  梅若 六郎

ワキ 道成寺従僧 宝生

ワキツレ 従僧 宝生 欣哉 宝生流

ワキツレ 従僧 殿田 謙吉

アイ 能力 [4] 山本 東次郎 大蔵流

アイ 能力 山本 則直 大蔵流

笛 松田 弘之 森田流

小鼓 [16] 大倉 源次郎 大倉流

大鼓 亀井 広忠 葛野流

太鼓 観世 元伯  観世流

後見 梅若 恭行 観世流

後見 山崎 英太郎  観世流

後見 平井 俊行  観世流

鐘後見 梅若 晋矢、小田切 康陽、角当直隆、山中 貴博
 
 
梅若玄祥師のシテに、大倉源次郎&亀井 広忠の鼓方ゴールデンコンビ。
鐘は、まさに先ほど展示室で見た鐘が使われていた。
 
この鐘、ちょっと歪というか、均等な釣鐘型ではなく、前後の長さが不均衡なのだが、その秘密がDVDを観ていて分かった。
前方(客席側)の鐘に重みをつけることで、やや前方斜めに傾くため、吊っり上がった時に安定するのだ。
つまり、均等な釣鐘形だと、吊りあげた時にクルクルまわりやすくなるからなのだろう。
 
広忠師と源次郎師の獅子の咆哮のような掛け声は迫力満点。
画面全体から、びりびりと凄まじい気迫が伝わってくる。
 
小鼓方の打音と長く間を置いた鋭いシャウト。
それに合わせる乱拍子は、女の体内にうずく蛇がくねくねとのたうちながら、ソロリ、ソロリと鎌首をもたげるかのような、長く間をとる緊迫した独特のリズム感だ。
鐘(男)に対する女の妄執の根深さ、粘着性を表現しているのだろうか。
 
そこから一転、急の舞になると、もう息をするのも忘れるほど、手に汗握りながら見入っていた。
 
梅若玄祥師もほんとうにすばらしかったけれど、鼓方の両人も準シテといえるほど、この最高の『道成寺』を現出させた立役者だ。
 
DVDだけでもこれほど感動するのだから、実際の演能は、もう涙が出るほど素晴らしかったに違いない。観たかったなー。
 
 
 
2本目に観たのは、今年上演された『鉄輪』。
 
 
前シテ 女 [9] 観世 銕之丞



後シテ 女の生霊 [9] 観世 銕之丞

ワキ 安倍晴明 殿田 謙吉  宝生流

ワキツレ 男 則久 英志 宝生流

アイ 社人 高野 和憲 和泉流

笛 藤田 次郎 一噌流

小鼓 古賀 裕己 大倉流

大鼓 國川 純  高安流

太鼓 桜井 均  金春流

後見 清水 寛二  西村 高夫

地謡 地謡地頭 浅井 文義 
青木 健一 安藤 貴康 谷本 健吾  長山 桂三


この曲でも、作り物の「祈祷棚」を観ることができた。

『道成寺』も『鉄輪』も、執着や嫉妬によって蛇や鬼のような形相になった悲しい女の物語。

どんなに美しい女性でも、心に強い負のエネルギーをためていると、恐ろしい顔になってしまう、という教訓めいた曲でもあるけれど、それはいつの時代にも言えることであって、怒りや嫉妬や妬みなどといった悪い感情は、美容にも健康にも悪いと思った次第であった。

負の感情に取り憑かれたツケは恐ろしい。

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