土曜日の午後、国立能楽堂の図書閲覧室ではじめて過去の演能のDVDを視聴したのだが、
その前に、この日が展示最終日となっていた資料室の「作りもの入門」展へ行ってみた。
舞台上のさまざまな作り物が、間近で見られるとあって、かねてから気になっていたのだが、
展示資料室に入ってみると、ガラガラを通り越して人影はなし。
おかげで作りやデザイン、大きさなどをじっくりと観ることができた。
印刷資料によると、
能の作り物は、竹を主材料として、釘を使わず「ポウジ(白、赤、紺などの晒を包帯状に裂いたもの)」をきつく巻き上げて骨組みをつくるそうだ。
展示では、作り物が4つに分類され、カテゴリーごとに陳列されていた。
分類項目は、以下の通り。
(1)籠り屋:中に人が入ることが可能。場所や建物を表わす。
例)『道成寺』の鐘
今回、いちばん観たかった展示物。吊り上った状態で展示されており、かなりの重さであることがうかがえる。内径は1mほどだろうか、中は狭く、シテ方が頭を打ち付けて脳震盪を起こすこともあるというのもうなずける。
中がどうなっているのか気になってのぞいてみたが、台の上に上がってはいけないので、あまりよく見えなかった。大柄な縁者だと着替えるスペースもあまりなさそうだ。着替えた衣裳を収納する、もしくは引っかけておく工夫などもなされているのだろうか。
「道成寺の鐘の中に入ってみる」という体験企画講座があれば、是非とも参加してみたい。
(2)据え台
一畳台など。
(3)乗り物
輿や船など。
(4-a)地面に固定されているもの
『野宮』の柴垣付鳥居
支柱となる竹棒に二枚の板を掛けて鳥居とし、柴垣を少し付けただけの、倒れそうなほど簡便な作り物だった。
『小督』の柴垣付門
こちらは『野宮』の鳥居よりもちょっと凝っていて、柴葺の屋根が付いていた
(4-b)可動式のもの
『鉄輪』の祈祷棚
そのほか『砧』の砧や『松風』の汐汲車、『鞍馬天狗』の羽団扇など、小道具ともいえる「採り道具」など、全20点が展示されていて、個人的はとても楽しめた企画展だった。
それにしても、想像通り、作り物の大きさ・高さは驚くほど小さい。
『道成寺』の鐘や『黒塚』の萩小屋などは、私くらいの体型(身長170センチ、体重48キロ)で、あの重く嵩張る能装束をつけたら、ぎりぎり入れるくらい大きさのように思われた。
男性能楽師の中には、上背のある人や横幅のある人、ボリュームのある方もいらっしゃるので、そこは技量でカバーされているのだろうか。
能舞台の大きさは決まっているし、舞台上には囃子方や地謡、ワキや後見など、大勢の人が上がるので、作り物の大きさも限られてくるから、小さめなのは致し方ないのだろう。
大柄な人は、演技の上でも人一倍工夫が必要なのかもしれない。
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